2012年5月4日金曜日

「ダイナミック競争戦略論・入門 」河合忠彦 書評136(7)

ジャック・ウェルチ
純粋理論と実用技術(2)

河合教授は、「ダイナミック戦略のタイプ」として、12もの戦略タイプを掲げられた(表6-1)。精緻に構成されたセオリーはしかし、実用の場面ではより厳密な理解と選択を要求することになる。

どの戦略タイプを選ぶかの一つのツールとして、「ダイナミック競争戦略の経営プロセス」(表7-4)をまとめられている。表7-4は、「INPUT」と「OUTPUT」により構成されている。もちろん、前者を入れた後、後者を得よ、というフレームワークである。しかし、前者を埋めても必ずしも後者が形成されるわけではない。

問題は、上記のこれらの作業を、通常の経営実務家CEOが遂行していけるのか、というコトだと思う。経営学を専攻しなかった圧倒的多数の世の社長には無理な作業だとしたら、戦略専門スタッフを置くことになるのか。ダイナミック競争戦略は、戦略専門スタッフか、戦略ブティック系のコンサルタントには駆使できるかも知れない。しかしそれを提案説明される経営陣側では「経営の共通言語」となりえないという至難性が予想される。

GEには長くBSUごとに「戦略マネジャー」が置かれ、彼らの戦略立案によってBSUの経営が差配されたという。CEOとの役割分担や優先順位、そして時間的な遅滞などの弊害がさぞ大きかったのではないかと、CEO職を勤めさせて貰った私には思える。果たして、あの大経営者ジャック・ウェルチがその職制を一掃したわけだ。

(この項 あと一回)

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