2015年1月31日土曜日

浦中宏典氏 サハラマラソンに出走(3)

●1件1億円も…資金はネットで集める?勝手に株式店頭公開できる時代に            なんとも稚気とオリジナリティに溢れ、おもしろいではないか。浦中氏の場合は募集サイトを独自に立ち上げたが、クラウドファンディングを募集する共同サイトはすでに幾つも存在する。
 
2013年の実績では、世界中で5100億円以上がこれらの公募サイトを通じて投資されたという。海外では1件で1億円規模の資金を集めたプロジェクトも出ている。募集されているプロジェクトは、今のところ公共性やチャリティ性の高いもの、趣味嗜好性の高いもの(映画や演劇などの実現化)などが多いようだ。
 
 しかし、その構造を観察してみると、クラウドファンディングには大きな可能性が隠されている。つまり、チャリティ性や趣味性の高いプロジェクトだけでなく、単純に資本募集をめざす資本市場として発展しうる。

 つまり株式の店頭公開をネットの世界で“勝手に”できる。というのは、サイトの設置をオフ・ショアにしてしまえば、各国財務当局の規制外となるのだ。仮想通貨として世界中に広まったビットコインと同様な構造だ。

 現在複数発足しているクラウドファンディング運営サイトのどこがいち早くこのことに気が付き、非公式株式市場の起業に走っていくだろうか。一方、出資者側の立場からすれば投資機会が広がるが、規制されていないということは保護もされないということで、リスクも大きなこととなる。今後のクラウドファンディングの隆盛を興味深く見ていこう。

(この項 終わり)
 
 
 

2015年1月30日金曜日

浦中宏典氏 サハラマラソンに出走(2)

上記の目的を広く知ってもらうためと、参加経費(200万円以上)を捻出するため、浦中氏はクラウドファンディングの手法を採用した。クラウドファンディングとは、自らのアイデアや企画をインターネット上で公表し、賛同者から資金や人的支援などを集められる仕組みだが、これが起業家的でとてもおもしろい。


 援助プログラムとして5つの種類が用意されている。一番安価なのが「チャレンジプラン:サハラに送り出してやろう!プラン」で5000円。これには出資者に浦中氏の出発式への無料招待がある。逆に最も高額なのが「ウルトラスペシャルサポートプラン」の10万円で、出資者は出発式だけでなく下記の特典を受けられる

・報告会への無料招待
・レース中の様子を映像とメッセージでお届け
・オリジナルポストカードとウエア
・ロゴマークの掲載
・出発式にて浦中氏から参加者の皆さんへご紹介
・報告会でプレゼンテーションができる権利
・チラシ・DM配布権
・サハラチャレンジ中の浦中氏に命令を出せる権利


(この項 続く)

2015年1月29日木曜日

浦中宏典氏 サハラマラソンに出走 (1)

過酷な環境下のマラソン、いわゆるエクストリーム・マラソンとして知られるサハラマラソンは、次回の4月大会は30回目の記念大会となり、世界中から1300人ものランナーが参加する。7日間にわたり、モロッコのサハラ砂漠を250km走破するだけでなく、必要な食料や水もランナーが自ら背負わねばならない。世界一過酷なレースといわれている。

 サハラマラソンには毎年日本人も複数参加するようになったが、30回記念大会に筆者の知人、浦中宏典氏が参加する。浦中氏はアスリートのサポートなどを手掛けるストレッチサポートの社長であり、プロのトレーナーでもある。また経営者ブートキャンプで学んだ企業家だ。

今回の参加に当たって浦中氏は「他の日本人ランナーへもトレーナーとしてサポートしながら、皆でゴールをめざす。アスリートとトレーナーについて知ってもらうためのチャレンジと考えている」と語る。

(この項 続く)

2015年1月28日水曜日

パナソニック、負け組から完全復活 剛腕・津賀社長の“称賛に値する”経営&大改革(3)

業績回復も好調だ。14年3月期に3期ぶりに最終黒字に転換し、直近の14年度の通期業績見通しでは売上高は7兆7500億円と据え置いたものの、営業利益は3100億円から3500億円(利益率4.5%)に、当期純利益は1400億円から1750億円になると上方修正した。15年度の達成を目標にしていた中期経営計画を1年前倒して達成できる見通しとなり、津賀氏の鮮やかな手腕が際立っている。

 津賀氏が就任してまもなく、自ら「パナソニックは負け組だ」と公言したことも、今となっては社内へ向けての危機意識の喚起だったということだろう。パナソニックという大企業の舵取り、それもプロパーのたたき上げの経営者による浮上策を今後も見守っていきたい。

(この項 終わり)

2015年1月27日火曜日

パナソニック、負け組から完全復活 剛腕・津賀社長の“称賛に値する”経営&大改革(2)

「それにもかかわらず」のパナソニックの意思決定は評価されるべきである。企業経営とは「状況対応業」だからだ。円安が進んでしまった、それではどうする? という状況に対してパナソニックは動いたのだ。パナソニックのアジリティ(機敏)のある動きに対して、例えば競合のシャープ幹部は「生産ラインを復活させるには、かなりのコストがかかる」(1月5日付読売新聞記事より)としているが、「勝ち組」とされるパナソニックに対してシャープが「負け組」といわれる理由が透けてみえる。

●「パナソニックは負け組」発言の真意


 津賀一宏氏が2012年6月にパナソニック社長に就任した時、筆者は自身のブログで「パナソニック社長交代、津賀一宏社長の再生戦略は『家まるごと』だ」と書いてエールを送った。パナソニックはその後、自動車関連に加えB to B分野に軸足を移し業容を拡大させ、業績回復を果たした。テレビ部門出身の津賀氏が果断にプラズマテレビ事業を閉鎖した意思決定は賞賛に値するし、12年10月には約7000人いた旧本社部門を再編し、150人程度のコーポレート戦略本社に削減した豪腕には肝を潰した。

 代わりに設立した、備品管理など社内総務関連の間接業務を請け負う子会社パナソニックビジネスサービス(PBS)も3月までには売却するという。社員数が約900人のPBS売却で、間接業務を担うグループ企業の再編にほぼメドがつく。

(この項 続く)

2015年1月26日月曜日

パナソニック、負け組から完全復活 剛腕・津賀社長の“称賛に値する”経営&大改革(1)

パナソニックが新年早々に、海外生産の大きな部分を今春から順次国内生産に切り替えることを発表した。まず縦型洗濯機や電子レンジを、続いて家庭用エアコンも中国生産から国内生産に戻すとしている。

 これはもちろん最近の円安に対応した措置である。パナソニックは家電製品の約4割を海外生産しており、1円円安が進むと年換算で約18億円の利益減少になるという。1ドル120円の為替相場では大幅な減益が出てしまうことになる。

 中国やアジアなどの生産拠点各国での人件費高騰もあり、国内生産回帰の動きはダイキン工業やキヤノンでも見られていたが、大手が国内で生産を再立ち上げするのは、実は容易ではない。部品部材などの供給メーカーにまで海外進出をお願いした揚げ句、旧来の自社工場は空洞化していたりする。また、為替相場も2~3年ベースで考えればどう動くかは不透明で、国内回帰を成し遂げたと思ったら1ドル100円を下回る円高が戻ってきたりする可能性も否定しきれない。

(この項 続く)

新将命『経営の処方箋』特別講義 2月7日(土)

あの新将命先生が新刊『経営の処方箋』を出版しましたので
今回特別講義を行っていただくことになりました!

『経営の処方箋』では、今まで新先生が現役の経営者の方から寄せられた
経営に関するリアルな質問に対して明快かつ具体的な答えが示されています。

本書にも書かれている勝ち残る企業づくりのながれの創り方や、
黒字企業の利益の源泉はどこからくるのかなど新先生よりご教示いただきます。

また、当日は時間の許す限り新先生に直接ご質問し、
切れ味鋭いアドバイスをいただけるまたとない機会です!

ご参加者には新先生のご著書『経営の処方箋』(ダイヤモンド社)
をプレゼントいたします。

ご興味のある方は、事務局(info@keieisha.jp)までご連絡ください。

今回の特別講義は、オープンクラスですが経営者ブートキャンプ受講生(卒業生含む)及び講師からの完全紹介制となります。

◇開催概要◇
【日時】2015年2月7日(土)14:45~16:15(受付14:30~)
【会場】G-FIELD EBISU(経営者JPオフィスビル7Fセミナースペース)
【住所】〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-16-2 K&S恵比寿ビルII 7F
【聴講料】10,000円(税込)
【申込締切】2015年2月5日(木)

【お問い合わせ先】経営者JP事務局(info@keieisha.jp)

2015年1月25日日曜日

「経営戦略策定指導法」セミナー 出講

経営戦略を立てて貰う、あるいは立て方を覚えて帰って貰う、というセミナーや研修は多数こなしてきた。

「戦略を立てるのを指導する方法を伝授する」という切り口でのセミナーは今回が初めてだった。

軍師の会は会計士や税理士など、士(さむらい)先生が集まっている会。顧客企業に更なるサービスとビジネスを広げるためには、顧客の中に入っての経営戦略策定指導が新しい分野となる。

日本橋で全国から集まった先生方に2日間の研修。戦略カードと「策定5つのステップ」をたっぷり伝授した。私の「課題解決型戦略策定法」が拡がっていってくれれば嬉しい。

トヨタ、特許無償提供の衝撃 世界中から無視され不発か、FCV本格普及のリーダーか(4)

 恐らく特許の無償公開だけでは陣営づくりは進まない、と筆者は見ている。たとえトヨタがOEM供給(相手先ブランド名製造)をしようにも、現時点では同社の製造キャパシティは圧倒的に小さい。といって、まさかトヨタが他社に補助金をばらまくわけにもいかないだろう。

 例えば、アライアンスを組んでくれる自動車メーカーの販売エリアにおける水素ステーション開設支援というのが、トヨタがすべき提案なのではないか。水素ステーションを1カ所新たに開設するには5億円ほどかかるとされている。純利益2兆円のトヨタなら、4000ステーションも設置できる。もちろん、トヨタ自身が開設するのではなく、それぞれの国で有力な水素ステーション会社へ出資したり、融資などを行うかたちで展開するのがいい。

 FCVの全面的な普及のためには、アライアンスづくり、そしてインフラづくりまでトヨタが戦略を策定・実施していく必要があるだろう。モノをつくらせれば世界屈指であるこの偉大な三河の田舎企業が、世界的な合従連衡を仕切っていく洗練した外交を発揮することができるのか。けだし見物である。

(この項 終わり)

2015年1月24日土曜日

トヨタ、特許無償提供の衝撃 世界中から無視され不発か、FCV本格普及のリーダーか(3)

●トヨタに求められる次の一手

 そして何より、欧州勢をどう取り込めるか。およそ世界の規格づくりの主導権を握っているのは欧州勢である。クラス意識が強く、アジア人に対して優越感を持っている欧州の産業界が、極東日本のトヨタに次世代自動車の主導権を渡すには大きな抵抗を感じるだろう。かといって、日本の自動車メーカーだけで結束しても、また新たなガラパゴス産業を形成してしまうだけになる。

思い起こされるのが、1970年代に起こった「ビデオ戦争」である。ソニーが開発したベータと、日本ビクターが開発したVHSが、家電メーカーを2分しての規格戦争を繰り広げた。技術的には必ずしも優位ではなかったVHSが勝利したのには「ミスターVHS」といわれた日本ビクターの高野鎮雄事業部長(当時)の存在があった。高野氏が松下幸之助を説得して松下電器産業(現パナソニック)を自陣に組み入れることに成功した。

今のトヨタに欧州の自動車メーカーを説得しきれるような「ミスターFCV」はいるのだろうか。特許を公開しただけでは、世界中の自動車関連企業が賛同してくれるはずはない。

(この項 続く)

2015年1月23日金曜日

トヨタ、特許無償提供の衝撃 世界中から無視され不発か、FCV本格普及のリーダーか(2)

FCVでトヨタは先行し、開発技術的には独走状態といった様相である。一見するとトヨタにとって好ましい状況にも見えるが、FCVの本格的な普及にはまだ遠い状況といえる。トヨタ自身も、当面製造できるFCVの台数は年間数百~数千台としている。これだけのロットでは、FCVに燃料を供給する水素ステーションの普及を促すクリティカル・マス(最小数量)に到達しない。そこで、「ぜひ他の自動車メーカーにもFCV製造を手がけてほしい」という目的で、特許開放という施策を打ち出した。

 これから本当の勝負が始まる。つまり、EV連合に対してFCV連合を組成できるかが、次代の趨勢を決する。今回の発表に対して日産自動車や本田技研工業(ホンダ)の経営陣は「評価する」というコメントを発表しているが、すぐにトヨタとの連携に乗り出してくるかはわからない。メーカーとしてのプライドもあるし、トヨタにイニシアティブを握られたかたちでのFCV陣営入りに対しての抵抗もあるだろう。

(この項 続く)

2015年1月22日木曜日

トヨタ、特許無償提供の衝撃 世界中から無視され不発か、FCV本格普及のリーダーか(1)

FCV車 トヨタ”ミライ

トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)関連の特許を公開し、無償提供すると発表した。

米ラスベガスで開かれた「2015 International Consumer Electronics Show(CES)」開幕前日、5日の記者発表会で米国トヨタ自動車販売社のボブ・カーター上級副社長が、「1月5日が自動車業界にとってターニング・ポイントになる」とぶち上げたのである。具体的には、FCVに関してトヨタが取得した5680余件の特許を公開、無償提供するという。

トヨタは昨年12月に、FCVとしては世界初となるセダン型量産車「ミライ」を発売した。定価は720万円強だが、補助金を使えば520万円ほどで入手できるという。すでに1000台ほど受注したと報じられている。

 ガソリン自動車、あるいは「プリウス」に代表されるハイブリッド車(HV)の次にくる次世代自動車としては、FCVと電気自動車(EV)があるわけだが、

(この項 続く)

2015年1月21日水曜日

タカラトミー、じり貧でリストラ招いた経営下手(3)

ここ数年、LIXILの藤森義明社長やベネッセホールディングスの原田泳幸社長など、外資系もしくは外資系色の強い企業から日本のオーナー企業への転籍・活躍が目立ち、「プロ経営者の時代」などと囃されている。メイ氏もヘッドハンターを通じた「オープン・マーケット」での経営者調達の例だ。

 しかし、メイ氏がそうした「プロ経営者」なのかというと、現時点では不分明だ。藤森氏や原田氏のように前職での華やかな経歴やトラック・レコードをひっさげての登場ではない。ユニリーバでマーケティング・マネジャーを務め、日本コカ・コーラではマーケティング担当の副社長だったとはいえ、活躍が業界外にまで聞こえてその名が知られていたというわけではない。

昨年10月には組織再編を行い、「幹部の平均年齢が5歳若返った」(メイ氏)という。工場や物流の無駄を削っているとも報じられているが、それは当然の施策ともいえる。1026種類あるトミカも「90%の利益は365種類から生まれている」とメイ氏は指摘し、本社の管理部門も企画・開発部門にシフトを考えているという。打とうとしている手が小粒の感は否めず、そもそもまだ実行されていない。

「再生経営者は最初の6カ月が勝負」というのが筆者の経験則であり、黄金律だ。ファンドが損切りをした昨年12月がメイ氏の6カ月目に当たる。明けた新年、この再生経営者は、どんな大胆な改革の一手を打つのだろうか。真価が問われる。

(この項 終わり)

2015年1月20日火曜日

タカラトミー、じり貧でリストラ招いた経営下手(2)

バンダイは『機動戦士ガンダム』などのテレビ番組のスポンサーとなり、それらのキャラクター玩具を大量に販売し成長してきた。一方のトミーはタカラトミーとなって「リカちゃん人形」という「ハローキティ」に匹敵するような認知度のキャラクターを手にしたのだが、ライセンスビジネスを展開しきれていない。

実際に動くメカニック的に優れた玩具をつくるのだけれど、いかんせん少子化の今、そのカテゴリーでビジネスを展開する限り、じり貧となってしまう。実際に業績は低迷し、13年3月期には138人の希望退職募集を行っている。

●期待の外国人社長登用


 このような状況で3代目オーナー社長である富山幹太郎氏が取った施策が、外国人社長の採用という大胆なものだ。14年6月にオランダ人のハロルド・メイ氏を副社長に迎えたのだ。富山氏がCEO(最高経営責任者)、メイ氏がCOO(最高執行責任者)としてタカラトミーの経営に当たるとしている。

メイ氏はオランダ人ではあるが在日期間が長く、幼少時代から主に日本で過ごしている。蘭英日のほかに数カ国語を駆使するという。
 ここ数年、

(この項 続く)

経営者ブートキャンプ第11期、5月より開講  受け付け開始


経営者ブートキャンプも回を重ねて、現在は第10期が進行している。参加者も講師陣も多士済々でかつその充実ぶりは比類無い。すっかり知名度も定評も定着した。

5月からは第11期が始まる。いよいよスケジュールなどが発表され、受付が開始された。志のある経営者、幹部の方は下記のURLから詳細に跳ばれたい。
https://www.keieisha.jp/seminar150523.html

2015年1月19日月曜日

タカラトミー、じり貧でリストラ招いた経営下手(1)


玩具メーカー大手タカラトミーが苦闘している。昨年12月には出資していた米投資ファンドTPGが出資分を損切りして資本提携を終了した。トミーとタカラが経営統合したのが2006年で、13年3月期には初の最終赤字71億円を計上し、今期(14年3月期)も赤字が予測されている。

 トミカやプラレールなどで知られるタカラトミーの認知度は高いが、玩具メーカーというのは大きな業容ではない。トミー、タカラ、バンダイが業界大手だったが、前2社が統合し、バンダイはナムコと統合して現在に至っている。戦後日本の輸出振興に貢献したこれらの会社はすべて、同族企業として出発していた。

 筆者は1970年代の終わりにトミーに勤務したことがある。当時はトミー工業という社名で、入社面接で上原宗吉常務(当時)は「当社は、バンダイのようにテレビキャラクターのビジネスに走らないことを誇りにしています」と話してくれた。これが実は玩具メーカーとしてのトミーの経営下手を如実に物語っていた。

 一方、バンダイは、、、

(この項 続く)

2015年1月18日日曜日

『すべては「売る」ために―利益を徹底追求するマーケティング』セルジオ・ジーマン 書評219(3)

本書にマーケティングのセオリーを見いだすことはあまりない。著者がコークや関連ブランドをリリースしたり拡販したりするのにどのような施策を行ったか、などのエピソードやその為のチーム組成、広告代理店の使い方など、実践的な話しがおもしろい。

ペプシに展開された、有名な「目隠しテスト」。私は自身がマーケターとして振り返ると、あれはペプシ側の恥さらしもいいところだと思っている。

つまり、「ペプシの方が上手いという人が60%いる」というのがペプシのメッセージだった。「しかしシェアはコークが70%、ペプシが20%」。上手くないコークの方がペプシよりシェアが高い、これこそブランド力の差というモノなのだ。ジーマン自身もヘボ・マーケターらしく、この点を指摘していない。

ジーマンが展開したことは妙手ではないが、壮大な失敗譚としても本書はけっこうおもしろい。私はほめているんだか、けなしているんだか。

(この項 終わり)

2015年1月17日土曜日

『すべては「売る」ために―利益を徹底追求するマーケティング』セルジオ・ジーマン 書評219(2)

それは何と言ってもコカコーラが、

1)世界最大のブランドである(ブランド認知調査で、毎年世界一とされている)。
2)典型的なコンシューマー・グッズでかつパッケージ・グッズなのだけどプロダクト・ライフ・サイクルの「サイクル」の枠を外れている、「お化け商品」である。

コークは、リリース後150年を経てまだグローバル・レベルでは「成長期」にあると考えられる。「成熟期」あるいは「衰退期」のサイクルはいつくるのだろうか。

こんなお化け商品のマーケティングの最高責任者と言うことなら、たとえ失敗譚でも聞いてみたくなる、というものだろう。

(この項 続く)

2015年1月16日金曜日

『すべては「売る」ために―利益を徹底追求するマーケティング』セルジオ・ジーマン 書評219(1)

海と月社、2010年刊、原書は1999年刊。マーケティングのコンサルタントが出しそうな本と思って開いたら、なかなかおもしろかった。

それは一重に著者の経歴による。何しろ、コカコーラ社のCMO(Chief Marketing Officer)だった人物で、あの悪名高い「ニュー・コーク」を送り出した。これが恐ろしいほどの大失敗で、同社は数ヶ月を経ずして「コーク・クラシック」という名のもと、元の味に戻してしまう。

ジーマンは同社を追われるのだが、CEOが代わり、2年後に復職する。本書では、
「ニュー・コークを出したので、コークの旧来の味の良さが強烈に米国民に認識された」
などとしているが、強弁ということだ。

しかし、ジーマンの同社での経験譚はなかなかおもしろい。それは、何しろ何と言っても、、、

(この項 続く)

2015年1月15日木曜日

MBA?安価なアジア留学がビジネスに有効(3)

●アジア一流校留学、とてつもない財産に


 とはいえ、欧米のビジネススクールへの留学は近年激減しているのが現状だ。入学を許される英語力や、2年間にも及ぶキャリアの中断、そして何より近年の授業料の高騰などがその理由だ。ハーバード大学などトップ・スクールで学ぶ費用は、生活費を含めると2年間で2000万円になったと聞く。その間の「得べかりしサラリーマンとしての年収」も足し合わせると、よほど経済的に余裕がなければ選択できる途ではない。

そこで、これからのMBA留学の狙い目は、実はアジアにある。世界の大学ランキングでは近年、14年こそ東京大学が巻き返したものの、シンガポール国立大学や香港大学は東大を凌駕しつつある。MBA校ランキングでアジア1位となったのは、これも香港の香港科技大学(HKUST)のビジネススクールである。留学にかかる総費用もハーバード大の半分程度で済む。地理的に日本から近いことも何かと便利だ。

 何より強みとなるのが、アジアで経済を牛耳っている華人系企業の御曹司やらが多数入学しているので、彼らと強固で親密なネットワークを築けることだ。中華系ビジネスは、彼らの言うところの「関係(ガンシー)」によって構築、展開されるので、そのネットワークに入れることは将来とてつもない財産となる。

 アジアに進出している、あるいはその可能性があるオーナー企業の子息などにとっては、MBAをアジアの一流校で取ることが、絵に描いたような国際派の次世代経営者の端緒となり得るのである。

(この項 終わり)

2015年1月14日水曜日

MBA?安価なアジア留学がビジネスに有効(2)

「授業はすべてインターネット授業で、修士論文はパワーポイントで約30スライドと指定されました。おかげでつくるのはとても簡単で、『論文発表』は3人の先生の前で10分間で終わりました。その先生方は初めて会う人たちでした」(同)

この社会人大学院は、商業的には大成功していることは間違いないだろう。この方式なら、学生を1000人規模でも受け入れられる。


 しかし、これでは「学校に行く」ということにはならない。スクーリングの快楽と質の止揚は、教授とインタラクティブに関わり、志と質の高いクラスメートと刺激し合うところに生まれるからだ。

 日本の社会人経営大学院と欧米のMBAコースのどちらを勧めるかと問われれば、筆者は文句なく後者を推す。というのは、語学力と強固なネットワーク、海外文化を体感することで培われるモノの見方、ビジネス意思決定の方法などを異国で獲得するということは、他に比すべくもない価値があるからだ。

(この項 続く)

2015年1月13日火曜日

MBA?安価なアジア留学がビジネスに有効(1)

MBA(経営学修士)プログラムの日本におけるハシリといえば、慶應義塾大学大学院だった。慶應の場合は日吉キャンパスに2年間に昼間通学するという通常の修士プログラムと同じなので、社会人には敷居が高く感じられた。

 2000年代に入り、雨後の筍のように社会人経営大学院コースが開講されたのには、大学側の商売事情も大きかった。少子化の影響が大学にも及んできて、各大学では目新しいプログラムを提供して学生を確保しなければならなくなっていたのだ。結果、地方大学から関西の大学までが東京の地の利のよい場所に「サテライト・キャンパス」を開設し、仕事帰りのビジネス・パーソンの獲得を競い合った。一方、志のあるビジネス・パーソン側からすれば、平日のアフター5と土曜日を使えば2年間で憧れのMBAを取得できる。

 しかし、新興のMBAコースの品質は、玉石混淆といった状況も見受けられる。筆者の知り合いがこの9月、ある経営大学院を卒業してMBAを取得した。彼は、「同学年には120名ほどの学生が入学しましたが、卒業までただの1度もクラスメートと会ったことはありません」と驚く話をした。

(この項 続く)

2015年1月12日月曜日

スカイマーク、「懐すっからかん」の経営危機を招いた、西久保社長の独断と愚行(3)

たとえどんな大企業であろうと、経営者がオーナー企業的に即断即決で意思決定していくこと自体は別に悪いことではない。ただし、「それがうまくいっていれば」ということだ。西久保氏の発注行為は今となっては同社を決定的に追い詰めてしまっている。経営者としては最悪手を打ってしまったとしかいいようがない。

 キャッシュ・フロー的に窮状に陥った同社は、投資ファンドに数十億円規模の出資を求めていると報じられている。一方で、オペレーション的には日本航空に加えて全日空とも共同運行というかたちでの援助を求めている。しかし、共同運行は開始されるにしても早くて3月となる。投資ファンドのほうはその共同運行の成り行きを見て出資可否の判断決定を行うとみられている。

 今後2~3カ月の間にスカイマークの命運が決まる。いずれにせよ、西久保氏はしかるべきかたちで経営責任を取るべきといえよう。

(この項 終わり)

2015年1月11日日曜日

スカイマーク、「懐すっからかん」の経営危機を招いた、西久保社長の独断と愚行(2)

加えて、ゴーイング・コンサーン(企業存続)の最大の指標となるキャッシュ・フローがとてもおぼつかない。12年3月末に306億円あったキャッシュが14年9月末には45億円まで減り、なお減少傾向が続いているという。同期間で毎月10億円近くのキャッシュが減少したので、この年末には同社の懐は「すっからかん」に近くなったと見るべきだろう。すでに設備や機器の売却を始めたとも報道されている。

●西久保社長の即断即決


 この不調の契機となったのが、前述のエアバスA380機の発注である。
「当初、エアバスはA320をスカイマークへ売り込んでいたが、社長の西久保がエアバスのカタログに掲載されていたA380に興味を持ち惚れ込んだことから発注につながったという」(「エアライン」<イカロス出版/14年10月号>記事より)
 スカイマークの主要機材はボーイング737で、その座席数は177席である。A380は最大853席という巨大機だ。10年に同社は4機を発注したが、翌11年に西久保氏はパリの航空ショーで同機のデモフライトを見て、2機の追加発注を即断したという。6機で計1950億円、年間売上高の2倍を超える発注行為を役員会の事前承認もなしに決行してしまった。

 まことに短慮だったというべきであろう。もっとも、西久保氏は同社の最大株主でもあるので、同社のガバナンス的には役員会に諮っても同じことになったであろうが。

(この項 続く)

2015年1月10日土曜日

スカイマーク、「懐すっからかん」の経営危機を招いた、西久保社長の独断と愚行(1)

「日経ビジネス」(日経BP社/2014年11月17日号)が発表した「社長が選ぶベスト社長」の調査結果で永守重信日本電産会長兼社長が1位に輝いた。同社創業者の永守氏は、ゼロから始めた日本電産グループを年間売上高約1兆円の規模にまで育て上げた実績を持ち、多くの経営者がその手腕を高く評価している。では、昨年のワースト経営者は誰かというと、筆者は国内航空業界3位スカイマークの西久保愼一社長を選出したい。

 昨年12月、欧州エアバス社が超大型機「A380」の売買契約をめぐり、英国の裁判所への訴訟準備を始めるとスカイマークに通知した。スカイマークが発注した6機のキャンセル料は最大7億ドル(840億円)に上る可能性があるという。これは15年3月期の同社の年間売上高予想880億円にほぼ匹敵する金額だ。

 一方、スカイマークの同期業績も急速に悪化している。売上高こそ前期(860億円)からあまり変わっていないが、経常利益は前期の4億円の赤字から122億円の赤字へ悪化する見通しである。

(この項 続く)

2015年1月9日金曜日

燃料電池車がエコカーの主役&ガソリン車を侵食する理由(3)

ガソリンスタンドの運営をみてみると、実は石油元売り会社直営のケースは少なく、いわゆるフランチャイズ形態である。その数が伸びていた時期には、元売り各社からの働きかけにより、他社への看板替えも頻繁に行われた業界なのだ。

ということは、ビジネスの流れによって、水素ステーションへの転業にも抵抗がない業界なのである。筆者がもし水素ガス元売り会社の社長だったら、営業部隊に大号令をかけて、経営が順調でないガソリンスタンドを一斉に一本釣りして業態転向をさせ、一気の陣地取りをするだろう。

 2018年度をメドに商用の 水素ステーションを100カ所設置する意向を表明している石油元売り大手のJX日鉱日石エネルギーの年商は7兆円強、今年水素ステーションへの参入を発表した岩谷産業は同5000億円ほどだ。2030年までにこの2社の年商は拮抗する、とここでは予言しておく。何兆円の規模で拮抗するかは、岩谷産業が展開するビジネス戦略による。

(この項 終わり)

2015年1月8日木曜日

燃料電池車がエコカーの主役&ガソリン車を侵食する理由(2)

戦後しばらく東京など大都市の家庭燃料はプロパンガスだった。各家庭にはガスボンベが搬入され、使い切ると入れ替えられた。そんな社会的インフラが都市ガスの普及と共に10年ほどで一掃されてしまった。

「イノベーションのジレンマ」で説明できる「抜本的な製品交代」の最近の事例として、銀塩フィルム・カメラからデジタル・カメラへの移行、そしてそれに付随して起こった米コダックの倒産がある。フィルム・カメラを駆逐したデジカメも、今では普及が進むスマートフォン(スマホ)によって駆逐されつつある。少なくとも、コンパクト・デジカメは壊滅的状態となっている。このフィルムカメラ→デジカメ→スマホという「抜本的な製品交代」は、わずか10年ほどの間で起こった。

ガソリンスタンド業界の特殊事情


 ガソリンスタンドから水素ステーションへの転換を考える上でもうひとつ大きな要素が、地下に設置されているガソリンタンクだ。この地下タンクは寿命が約30年といわれ、まさに今多くの地下タンクが交換時期を迎えている。ところが地下タンクの設営には数千万円規模の金額が必要であり、かつ交換作業期間は休業を強いられる。これが現在、特に大都市部でガソリンスタンドの数が急減している大きな原因となっている。

(この項 続く)

2015年1月7日水曜日

燃料電池車がエコカーの主役&ガソリン車を侵食する理由(1)

トヨタ自動車は昨年12月、世界初の市販燃料電池車(FCV)「ミライ」(税込723万6000円)を発売し、すでに全国で年間生産台数の700台を上回る1000台を受注したことが明らかとなり話題を呼んでいる。

 そんな中、エコカーとしてのFCVと電気自動車(EV)の優位性について議論が盛り上がっているが、環境の観点からみればEVのほうが分が悪いといえよう。総合的なエネルギー効率を考えると、原子力発電が全面的に停止している日本において、例えば火力発電では化石燃料という一次エネルギーを燃やしてつくられた電気という二次エネルギーをEVは使う。つまり「EVはクリーン」というイメージが強いが、実際には発電の際に大量のCO2を排出するなど環境負荷が発生している。

現在街にはガソリンスタンドが立ち並んでいるが、それらが近い将来FCV向けの水素ステーションに取って代わられるのだろうか。筆者は十分起こりうることだと思う。

(この項 続く)

2015年1月6日火曜日

スキーは楽し

ジャンプする筆者近影
正月休みは恒例のスキー。

昔からのスキー仲間が次々とゲレンデを去り、今ではシーズン数回ほどしか行かない。

最初一本目のリフトを降りるまでがいつも面倒に感じる。滑り始めるとまあ若い気分に戻れる。

この頃、毎度のことだが
「これが最後か」
と思うようになってきた。
怪我をせずに帰路に就くと感謝の念を抱く。無事にいつまで、、、

2015年1月5日月曜日

エコカー戦争、EVはFCVに絶対勝てない理由(3)

●航続距離と燃料充填時間で大きな差


 一方、FCVの場合、そのような家庭での面倒が起こらない。先日岩谷産業が発表したような水素ステーションに乗り付けて、水素ガスを充填すればいいだけのことだ。これは現在のガソリン補給と同じやり方なので、消費者が刷り込まれてきた消費行動と合致して抵抗感がない。せいぜい、プロパンガスを使っているタクシーが専用スタンドを覚えておくくらいの感覚になるだろう。

 またEVと比べて航続距離が長く(500km以上)、充填時間は短い(3分程度)。EVは急速充電器で15~30分程度であり、簡便さにおける水素ガス充填の優位性は明らかだ。
 FCVとEVを比較する場合、このような消費者目線の便宜性議論が有用で必要である。

(この項 終わり)

 

2015年1月4日日曜日

エコカー戦争、EVはFCVに絶対勝てない理由(2)

加えてEVは、約15Aの電力を使用するという。家庭用配電盤は通常10A程度であり、最大に増やしても20Aである。所有者が夕方帰ってきてマイカーをプラグにつないだとたん、自宅の電気器具の使用が朝まで大幅に制限され、毎月の基本電力料が大幅に上がる。

 EVの広汎な普及のために阻害となる要因は、まさにこの充電方式である。外部スタンドとなる充電ステーションが経済合理性を有するためには、対象であるEVのクリティカル・マス(市場成立のための最低必要量)が必要となる。

 よって、普及していくにはまず大都市からとなるが、自家用車オーナーのどれだけが自宅に駐車場と専用充電器を設置するかがカギとなる。当然設置のためには外構工事が必要となるが、現行の充電設備費補助制度は個人住宅を想定していない。ちなみに補助条件の一つとして社団法人次世代自動車振興センターは「充電設備が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること」としている。

(この項 続く)

2015年1月3日土曜日

エコカー戦争、EVはFCVに絶対勝てない理由(1)


プリウスにに代表されるハイブリッド車の帰趨はどうなるのか。競合するのは前回連載で取り上げた燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)となる。これらの優位性について主としてエネルギー効率の観点から議論されがちだが、実は燃料の充填方式の違いが普及に大きな影響を与える。

 決定的な違いは、FCVが専用の水素ステーションに行かなければならない一方、EVは電源設備があれば自宅でも充電できるという点だ。よって、一見するとEVのほうが利便性に勝るようにみえる。

 しかし、EVに電源を接続するためには、専用の充電設備を設置しなければならない。家庭用100V電源で設置できる設備は「普通充電器」と呼ばれ、EVをゼロの状態からフル充電するまで7~8時間を要する。オーナーは毎日帰宅するごとにマイカーにプラグ接続し、朝まで置いておかなければならない。

 加えてEVは、、、

(この項 続く)