2017年7月5日水曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (7)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

自社での大型M&Aは諦め、巨大ファンドに参画を

 西室氏は、日本郵政の前にも東芝で社長としてウェスティングハウスの買収を決定し、この2つの案件による損害計上は1兆円を超えた。こんな経営者も稀有である。私は同氏を「平成の大残念経営者」と呼んでいる。
 東芝の不正経理への同氏自身の関与が取りざたされていた16年2月に突如検査入院し、日本郵政社長などの公職を辞し、以来公の場に出てくることは無い。
 株主代表訴訟などの意欲を大きく削ぐような入院のタイミングではある。
 さて、トール社、野村不動産HDという祭りが終わり、日本郵政の次の一手はどんなものがあるのか。
 グループでの総資産が295兆円もあるというとんでもない財務規模の巨大企業が日本郵政だ。大型M&A数千億円という規模でも実は、こんなグループの財務状況に大きな影響を与えられるような案件は希少だし、それをモノにできる機会は当然少なくなる。またモノにしたとしても、とんでもなくM&Aが下手なお役所体質の企業グループだ。
 私のお勧めは、もう自らで大規模な事業会社を外から取り込むのは諦めて、「餅は餅屋」で、専門の投資ファンドに投資することだ。
 たとえば孫正義氏が10兆円規模で組成しはじめた「ビジョンファンド」に、日本郵政単体で10兆円を出資させてもらい、その運用はファンドに一任するなどだ。295兆円という気の遠くなるような額の資産をみずからで、ちまちま運用してもその母数に意味のある成長と利益は、つまり企業価値の増大はなかなか望めないだろう。

 しかし、公社体質の強い日本郵政グループの経営者諸氏が、果たしてそのような経営合理性の視点と思い切ったアクションを実践することはできるのだろうか。注目して見守りたい。
(この項 終わり)

2017年7月4日火曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (6)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

またM&A名人として知られる日本電産の永守重信社長は、「EBITDA10倍以上の会社は買わない」と明言している。EBITDAとは、買収先の経常利益と減価償却額の合計で、10倍とは10年をかけると投資キャッシュは元を取れるということだ。買収してからその企業の経営効率を上げたり、当社とシナジー(統合補完)効果により業績を加速させることにより、その10年を短縮するところに買収側経営者の腕の見せどころがある。
 ちなみに、トール社買収時のEBITDA倍率は9.2だったので、西室氏がPMI(統合後経営管理)をしっかり差配していれば、今回のような巨額損失の計上には至らなかったかもしれない。
 実際、日本郵便がトール社に役員を派遣したのは、17年2月に至ってからのことである。前述した17年3月期ののれん代損失計上が確定してからの、アリバイつくりのような役員派遣に私には見える。
 実力以上のM&Aをしてしまい、その後も何もしなかった、という点で西室前社長はその責任を糾弾されるだろう。

(この項 続く)

2017年7月3日月曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (5)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

買収したトール社を、西室氏は持ち株会社である日本郵政ではなく、子会社であり事業会社である日本郵便の下につけた。
 しかし、考えても見てほしい。日本郵便というのは日本全国津々浦々に郵便局を開設して、日本国内の「郵便」事業を営々として担ってきた。トール社を買収したその時点ではまだ民営化されていない公社であり公的企業だったのだ。国際ビジネスとはもっとも遠かった地平にいた企業が日本郵便だっただろう。
 そもそも日本郵便グループは、公社という体質を強く保持していて、なかなか他の民間会社とさえ合わせられない。10年に日本通運の「ペリカン便」を統合したときも、規模拡大を果たせなかったばかりか、1000億円規模の赤字を出すに至っていた。
 そんな「純ドメ(ドメスティック)」の極にある会社に欧米文化であるオーストラリアの巨大会社を経営できる人材やノウハウが有る、とでも西室氏は判断したのだろうか。
 日本側に海外子会社の経営ノウハウがあり、しっかりガバナンスを効かせればうまくやっているところはいくらでもある。同じ公社上がりでもJT(日本たばこ産業)は、海外M&Aの優等生だ。その下地には長年国際的な原料調達や製造展開のノウハウの蓄積がある。

(この項 続く)

2017年7月2日日曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (4)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日


西室泰三前社長の負の遺産、トール社買収

 オーストラリアの物流会社トール社の買収を決断したのは、日本郵政前社長西室泰三氏である。西室氏は郵政民営化に当たり、13年に初代社長として政府により迎えられた。15年に日本郵政グループ3社を同時上場させる陣頭指揮を執り、実現させたのだが、この巨大グループをさらに成長すべく画策したのが大型M&Aである。
 トール社の買収は西室社長(当時)の独断的な決定だった。6,200億円という買収額も、プレミアムが乗せられすぎている、つまり高値つかみだ、という批判が強かった。

トール社買収失敗は、買収後の経営の見通しの無さに要因

 私はしかし、トール社買収の失敗は、買収時点での資産評価よりも、買収後の経営の見通しの無さにあったと見ている。トール社買収について西室氏は当時「国際物流戦略の展開」としていたが、本当にそんな見込みがあってのことだったのか。

(この項 続く)

2017年7月1日土曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (3)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

日本郵政が赤字に沈んだ最大の原因は、郵便事業を担当、展開している子会社、日本郵便が3,848億円の当期損失を計上したからだ。そしてその原因は、15年に日本郵政が買収して日本郵便の子会社とした、オーストラリアの物流会社トール社ののれん代を全額減損処理して4,161億円の損失を計上したことにある。
 のれん代とは企業をM&Aした時、相手側の純資産額と買収価格の差額として計上されるものである。15年に6,000億円強を投資して買収したトール社には、4,000億円強も余分に払った。その時点ではその差額は回収できるとしたのだが、17年3月期になって、それを諦めたので損失計上した、ということだ。
 日本郵政はそのリカバリー・ショットとして野村不動産HDのM&Aを目指した。ところがトール社という大型投資案件の失敗に懲りた内部や大株主である政府の慎重派が、野村不動産HDの株価伸長によって不安の声を大きくしたので、今回のディールは流れてしまった、という成り行きだ。
 つまり、一連の騒動はトール社に始まり、トール社で終わったということだ。

(この項 続く)

2017年6月30日金曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (2)

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」


2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

トール社買収でやけどした日本郵政に慎重論

 今回の買収案件は、シナジー効果があまりなかった、と私は見ている。確かに日本郵政もグループとして多数の不動産を有しているが、その大部分は小店舗サイズの郵便局だ。一方、野村不動産HDは大型マンションの開発や管理を主要業務としている会社である。駅前の小さな郵便局の土地にマンションを建てるわけにいかないし、その小さな郵便局の管理を大手である野村不動産HDに委託するメリットもない。
 野村証券は、日本郵政が2015年に上場したときの主幹事という縁があった。大型M&Aを実現したい日本郵政がその縁にすがったという、「投資有りき」で始まったディールなのだ。
 日本郵政が大型M&Aを希求したのには、今同社が置かれている状況、タイミングがある。今年1月に政府が日本郵政株の2次売却を決定したのだが、それには15年に初上場した売り出し価格1.400円を市場価格が上回っていなければならない(6月20日終値1,387円)。
 ところが、日本郵政は17年3月期で初の最終赤字289億円を計上してしまった。一方、野村不動産HDの同期純利益は470億円だったので、同社を取得して日本郵政の財務を大幅に改善しようともくろんだわけだ。

(この項 続く)

2017年6月29日木曜日

日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい (1)

WEBRONZAは、朝日新聞が展開している「論の饗宴」サイト。


「各分野の第一線で活躍する学者や専門家、ジャーナリスト、アルファブロガー、朝日新聞の論説委員、編集委員らが日々、独自の視点からニュースに迫って解説を加え、論を交わしていきます。 「政治・国際」「経済・雇用」「社会・スポーツ」「科学・環境」「文化・エンタメ」の5分野に、約300人にのぼる筆者が、多彩な論考を提供しています。また、その時々の旬の人物のインタビューや定期筆者でない筆者の論考なども掲載されます。」(同サイトより)

私のタイトル記事が6月27日にアップされた。以下、回を分けて転載する。


日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい

野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」

2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日

日本郵政は6月19日、野村不動産ホールディングス(HD)の買収案件について「現時点において検討を行っている事実はない」とのコメントを発表した。野村不動産HD側も「中止することになった」と発表した。
 買収計画が2017年5月中旬に表面化して以降、野村不動産HDの株価はほぼ2,000円から2,447円(6月16日)へと約20%も値上がりしてしまった。筆頭株主は野村証券を有する野村ホールディングスで33.7%を保有している。日本郵政は野村グループと交渉を行ってきた。
 野村ホールディングスは野村不動産HD株を約6,480万株所有しているので、2,400円時価だと評価額約1,550億円となる。M&A買収交渉なので、日本郵政はプレミアムを乗せなければならない。交渉額は2,000億円台となり、その価格で合意できなかった、ということだろう。
 一般市場から残りの株をすべてTOB(公開買い付け)するところまで日本郵政が踏み込むつもりだったのなら、さらにその2倍の資金投入が必要となった。つまり、最大で6,000億円規模の案件だった。

(この項 続く)

2017年6月28日水曜日

『間違いだらけのビジネス戦略』台湾で中国語出版



一昨年に上梓した『間違いだらけのビジネス戦略』(山田修、クロスメディアパブリッシング)が台湾で中国語に翻訳、発刊された。
光・現出版、350元(約1,300円)。

同書は韓国でも翻訳出版が進行している。拙著は何冊かが中国語および韓国で翻訳刊行されている。英訳されたものはまだない。

2017年6月27日火曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (3)

参加者の相互選出による最優秀発表者は、(株)岩田商会の村上和穂氏。同社の建材事業部長だ。

村上氏の発表は、業績向上を阻害している最大課題三つをすっきりと捕らえ、それぞれに対して、説得的な解決策を提示して評価されたものと思う。

ブートキャンプ第2期全体を通じての感想として、村上氏は

「目標と課題はつながらなくてもよい、という点が意外な印象でした。課題を解決することが結果として目標をクリアすればよい、という見方を大事にしたいと思います。」

と、アンケートに書いてくれた。私が戦略カードで指導している「課題解決型の戦略策定法」をよく理解してくれたコメントだ。

今期も、箱田忠昭先生、新将命先生の全面的なバックアップと参画をいただいて充実したプログラムとして修了することができた。

次の第3期は8月の末から12月にかけて、である。

(この項 終わり)

2017年6月26日月曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (2)

発表会では、それぞれの発表に対し、直前に2名のコメンテーターを指名する。発表が終わると、この二人のコメンテーターが、責任コメントを出す。最終発表に対してさらにコメントが付け加えられることにより、より建設的に戦略が仕上がる。

私が修了式で述べたことは、

「皆さんは机上の空論として戦略を策定したのではない、戦略セオリーを教えもしたが、単にそのシミュレーションとして戦略を立ててもらったわけでもない。

4ヶ月前には形もなかったそれぞれの実物戦略を成果物として手にした。

願わくば、会社に帰ったら、それをそのまま報告あるいは発表して実践してほしい。私たち講師や、他の参加者の叡智を結集して作ったものなので、現段階でこれ以上のものは出てこないはずだ。」

(この項 続く)

2017年6月25日日曜日

リーダーズブートキャンプ 第2期 戦略発表会 (1)

リーダーズブートキャンプ第2期の最終講を6月24日(土)に実施。

2月から7講に渡って展開してきた当プログラムは、最終講で参加者が策定した三年戦略の発表会で幕を閉じる。

発表用のファイルを策定するまでに、各参加者は戦略カードを使って、「5つのステップ」を走ってきた。途中、2回にわたって小グループ討議に臨み他の参加者3名との討議を経て、カード選択や表現の強化洗練のプロセスを経てきた。

発表用のファイルは個別に私にメールで提出され、それを添削もしたのだが、今回は特に「補習」として正規の7講の他の日に、1時間ずつの個別指導を行った。

こんな準備を経て、臨んでくれた発表会では、

(この項 続く)

2017年6月16日金曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(7)

やる気度を高める5つの方法



 ギャラップはもちろん「やる気度」を高める施策を提言もしている。一応紹介しておくと、次の5点だそうだ(「The Worldwide Employee Engagement Crisis, A.Mann & J. Harter, GALLUP, January 7,2016」より)。

1.「やる気」対策を会社の人事戦略に組み込む。
2.「やる気」を科学的に評価できる方法で測定する。
3.会社が現在どこにいて、将来どこに向かおうかということを理解する。
4.「やる気」をひとつの構成概念として見る。
5.「やる気」をほかの業務優先と整合させる。

 ちなみに4.は説明文も読んだがわかりにくく、執筆者本人がよくわかっていないことを書き連ねた可能性もあるが、何を列挙しても「施策」らしくはなるのだろう。

(この項 終わり)

2017年6月15日木曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(6)

ギャラップのこの論理によれば、企業業績を上昇させるひとつの目安としては、彼らの調査に現れる「やる気度」を上げればいい、ということにもなるだろう。しかし、経営者としての私の経験からいうと、実は社員全体の「やる気度」を上げるのは建前としてはいいが、必ずしも「効率」の向上につながるとはいえない。

 前出日経新聞記事では、3分類のうち「仕事意欲のない会社員」は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」と解説された。経営者としては、こんな社員たちを改心させ立ち直らせるのは「百年河清を俟つ」が如しのようなもので、できればお引き取り願いたいし、そうでなくてもそんなグループにかかわり合っていてはいけないというのが私の信条だった。

 実践的な経営者やリーダーの心得としては、「通信簿で5の付く社員を探せ」というものだ。正規分布で5点法の通信簿というと、全従業員のなかで「5」が付く社員の割合は7%となる。ちょうどギャラップ調査で「やる気のある社員」の日本における割合に一致する。

 組織の相対的な効率を上げるには、「やる気のある社員」を認知し、権限を委譲して早めに昇進させる、という方法に特化することなのだ。

(この項 続く)

2017年6月14日水曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(5)

やる気のある社員集団が企業にもたらすもの



 ギャラップは3つのカテゴリーに分けた社員たちが、会社に対する貢献で差を生んでいる、ともしている。経営の常識からすれば当然の結論である。同社は、次の9つの項目に対し、「仕事にやる気がある会社員」「仕事への意欲が低い会社員」で、何が違うのかを調査した。

・顧客評価(customer ratings)
・利益性(profitability)
・生産性(productivity)
・離職率(turnover)
・安全に関する事故(safety incidents)
・減損(盗品)(shrinkage<theft>)
・欠勤(absenteeism)
・医療安全に関する事故(patient safety incidents)
・製品・サービスの質(quality)

 そして、調査で得られた「やる気度係数」によって、上位4分の1(やる気の高い会社員)と下位4分の1(やる気の低い会社員)を比較した際の、各9項目における差というものを報告している。

 それによると、9項目で明らかに優劣の差がみられるとされた。たとえばやる気の高い会社員は、やる気の低い会社員と比較したときに、顧客評価を約10%、利益性を22%、生産性を21%引き上げ、離職率、欠勤、安全に関する事故の減少、不良品といった項目に関しても大きく差が出たというのである。

(この項 続く)

2017年6月13日火曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(4)

「それ以上に(筆者注:日本で)問題なのは『不満をまき散らしている無気力な社員』の割合が24%と高いこと。彼らは社員として価値が低いだけでなく周りに悪影響を及ぼす。事故や製品の欠陥、顧客の喪失など会社にとって何か問題が起きる場合、多くはそういう人が関与している」(同)

 実は「やる気」の割合が際立って低いのは日本だけでなく、韓国(11%)、台湾(9%)、中国(6%)と東アジア諸国に共通の傾向だ。中国は13年調査では世界最下位だった。しかし、これらの順位は参加国の経済規模と比し、違和感がある。低すぎはしないか、ということだ。

「労働生産性」の順位からみると、152カ国中日本は32位、韓国は36位、中国(香港を含まず)は83位だった。ちなみに米国は9位、香港は12位である(「労働生産性の国際比較(14年)、日本生産性本部」)。よって、儒教的な価値観による自虐的、卑下的な文化傾向が影響しているのかもしれない。

(この項 続く)

2017年6月12日月曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(3)

やる気のない社員大国、それが日本だ



 来日したクリフトン氏が開示した17年調査結果の一部は、実は13年のそれと大差ない、というか同様な結果を示している。17年で「(1)6%、(2)70%、(3)24%」という日本社員の調査分布は、13年では「(1)7%、(2)69%、(3)24%」だった。

 それにしても、日本の社員の「やる気」は同調査による国際比較で目を覆いたくなるものだ。13年調査から抜粋しても、(1)「やる気のある社員」の割合は世界平均で13%だったのに、日本はその半分以下だった。ちなみに米国のそれは30%で世界3位だったが、1位はパナマ(37%)、2位はコスタリカ(33%)だった。南米の国が前向きかつ幸福に仕事に取り組んでいる傾向は、お国柄として理解できる。また、アメリカ人がいかにも自己肯定的に自らへの評価が高いのもわかるような気がする。

 しかし、クリフトン氏は前出日経新聞記事で、アメリカでも「やる気」改善が起こってきたのは15年ほど前だったといい、「やる気係数」は必ずしも固定的でないという見解を述べている。さらに前世紀では日本の「やる気係数」も高かっただろうという見方も示している。


(この項 続く)

2017年6月11日日曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(2)

「良い子、普通の子、悪い子」




 17年版の正式レポートはまだ発表されていないのだが、同調査は繰り返し行われているので、前回となった13年版から調査手法や分類の定義を知ることができる。

 ギャラップ社は世論調査の分野では世界屈指の会社だ。「世界の職場環境の状況2013」によれば、調査可能な個人サンプルは190カ国地域で2500万人に上るとしている。同調査では毎回140カ国・地域で社員の意識調査を実施しているが、その結果として社員をその「やる気(原語ではEngagement)」度合いにより3種類に分類している。

(1)仕事へのやる気が高い会社員 (Engaged)
やる気にあふれ、会社への貢献度も高い。ビジネスの革新を後押しし、ビジネスをより発展させる。
(2)仕事へのやる気が低い会社員 (Not Engaged)
ただ仕事をやらされている。誰でもできる仕事をただ日々こなす。決して仕事に情熱やエネルギーをそそがない。
(3)そもそも仕事に意欲のない会社員 (Actively Disengaged)
無意識に不幸を招いている。やる気に満ちた同僚が得た成果でさえも無駄にすることがある。

 3つのなかで(2)は「単にやる気がない」だが、(3)は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」とされ、組織的には厄介なグループということだ。

(この項 続く)

2017年6月10日土曜日

やる気ない社員、全社員の7割との衝撃調査…やる気ある社員、全社員のたった6%(1)

「Thinkstock」より
世界中で世論調査を展開している米ギャラップ社は、数年おきに各国で社員の「やる気」を調査して発表している。「State of The Global Workplace(世界の職場環境の状況)」というそのレポートが最後に発表されたのは、2013年のことだった。

 17年に入り数年ぶりに調査が行われ、先ごろ来日した同社のジム・クリフトン会長兼CEO(最高経営責任者)が、そのさわりを披露した。同氏によると、日本の企業戦士の「やる気」はすごく低調だ、ということである。

「日本は『熱意あふれる社員』の割合が6%しかないことがわかった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった」(5月26日付日本経済新聞より)

 さらに、「企業内に諸問題を生む『周囲に不満をまき散らしている無気力な社員』の割合は24%、『(単純に)やる気のない社員』は70%に達した」(同)と、ネガティブ社員の割合の多さも指摘している。

(この項 続く)

2017年6月8日木曜日

『残念な経営者 誇れる経営者』  出版記念 戦略特別講演会 6月13日

山田 修氏
『残念な経営者 誇れる経営者』 
出版記念 戦略特別講演会 
「こうすれば勝ち残れる
経営戦略が立てられる」
  (リーダーズブートキャンプ第3期 説明会つき)
第1回 2017 年6月8日(木)15:00~16:45
第2回 2017 年6 月13 日(火)15:00~16:45
 会場:SMBC コンサルティング セミナールーム(東京駅徒歩5分)
 参加料:5,000 円
       (ブートキャンプ第3期に申し込まれた場合、参加費に充当)
 定員:各回30 名
 
★お問い合わせ・お申し込み:
 インサイトラーニング TEL: 03-3449-6301

2017年6月4日日曜日

リーダーズブートキャンプ、第6講は箱田忠昭氏が登壇!

リーダーズブートキャンプ第2期は全7講で進行してきたが、6月3日(土)にその第6講クラスを行った。

この日の特別講義は箱田忠昭特別講師による「説得・交渉・人間関係」。興味のあるドリルによってクラスは文字通り説得された。

『ザ・会社改造』(三枝匡)の後半も報告・討議してもらい読了した。今期は前半に『日本電産流V字回復の教科書』(川勝宣昭)を読み、今年の優良書2冊をカバーできた。

戦略策定を進めていた参加者の第2回グループ発表の残りも終え、いよいよ発表用のファイルの完成を待つ。

2017年6月3日土曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(7)

独断的な巨大買収はつまり、西室氏にとって自らの権力の誇示であり、所有権の再確認という要素が強かったのではないかというのが私の解釈だ。自ら決めればポンと数千億円もの買い物ができる―陶酔感も強かったのではないか。

 日本郵政におけるトール、そして東芝におけるウェスティングハウスの買収、この2つの案件による2社での損害計上は1兆円を超えた。西室氏の「損害関与への突出ぶり」は特筆ものである。

 年商1兆円規模の企業価値を毀損した例としては、負債総額1兆8700億円で旧そごうを倒産させた故・水島廣雄氏や、1兆円の売り上げを達成した後にダイエーを凋落させた故・中内功氏などが記憶にある。

 西室氏の場合はさらに2つの異なる大企業で、大損害に至る意思決定に大きく関与した、あるいは主導した経営者だ。こんなスケールの大きな経営者はこれからも滅多に出ないのではないか。その意味で、「平成の大残念経営者」として私たちの記憶にとどまることだろう。

(この項 終わり)

2017年6月2日金曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(6)

合わせて1兆円超の損害の発生



 西室氏は所有欲の強い人なのだろう、と私は思う。同氏の所有欲の強さは会社経営に当たっては、意思決定力を自らのものとして保持しようとして表出した。主要人事の決定や、海外大型M&Aなどの重要な意思決定の場面でそれは突出して発揮されてきた。

 それらの重要な意思決定が十全なものとして発揮されれば、それは名経営者ということになるのだが、西室氏の場合は「自分はこう決めた、後は任せた、あるいは知らない」と解されるような対応である。その最たる例が、買収したトール社を日本郵政の下に直接つけず、子会社である日本郵便のそのまた子会社に配したことだろう(日本郵政が親会社で持ち株会社、日本郵便は子会社で事業会社)。

 日本国内で津々浦々に郵便局を展開することだけを主要業務としてきた日本郵便が、突然預けられた海外法人であるオーストラリアの巨大会社を無事管理運営できるとでも西室氏は思ったのだろうか。M&A後の正念場となるPMI(Post Merger Integration:買収後統合)の見地からはとても理解できない配置である。

(この項 続く)

2017年6月1日木曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(5)

東証には財界人枠として用意された会長職に就任した。いわば「お飾り」的にいてくれればよい、という性格もあった。製造業である東芝出身の西室氏は金融、ましてや企業としては特異な証券市場運営会社などにはまったく土地勘がなかった。ところが、就任半年後の05年12月にみずほ証券がジェイコム株誤発注事件を起こし、東証側で責任を取って社長が辞任すると、自ら社長に就任してしまうのである。

 さらに東証、日本郵政の社長時代を通じて、西室氏は東芝にも強い影響力を行使し続けた。相談役という立場ながら、東芝本社の38階の役員フロアに故・土光敏夫元会長が使っていた部屋に居座り続け、日本郵政という大企業の社長職にある間も東芝に週3日も出社し続けて院政を敷いてきた。

 不正問題で揺れる東芝が次期社長の選定に苦慮したときに、西室氏は日本郵政社長としての定例会見で「本人が辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ」結果、現社長に室町正志氏(当時会長)が就任した、と語っている。つまり、自らが東芝のキング・メーカーだと広言したにほかならない。

(この項 続く)

2017年5月31日水曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(4)

権力への強い執着



 同記事で稲村氏は、2月に東芝が米原発子会社ウェスティングハウス関連で約7000億円もの巨額損失を計上した案件についても、西室氏の責任を追及している。

「いま西室氏の出身母体である東芝は巨額損失で危機的状況だが、その原因となった米原発会社ウェスチングハウス社の巨額買収に当事者としてかかわっていたのが、東芝相談役だった西室氏でした」

 日本郵政と東芝のこれら2大損失について西室氏一人がすべて責任を持っているかはともかく、それぞれの買収決定について深く関与していたことは間違いないだろう。

 西室氏は経営者として3つの大企業に関与してきた。東芝、東証、そして日本郵政である。その傍ら、公職としては経団連副会長、日米経済協議会会長、安倍政権が戦後70年談話をまとめた有職者懇談会の座長などを歴任してきた。そんな西室氏の経歴は、「肩書コレクター」、あるいは「名誉欲は人一倍強い」などとも評されてきた。

西室氏が経営してきた3社とのかかわりと、強い公職への意欲から私が感じるのは、同氏の「新しい権力の獲得への強い意欲」と「一度手にした権力への粘着質的なまでの強い執着」の2点である。

(この項 続く)

2017年5月30日火曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(3)

赤字の主原因は、15年に6200億円で買収した豪物流子会社トール・ホールディングスにあった。ブランド価値を示す「のれん」を一括償却したことにより、約4000億円もの損失を計上したのである。それに対して稲村氏は同記事で、

「特に巨額損失の全責任を負うべき西室氏に対しては怒りを感じます」

と、糾弾している。トール社の買収は西室氏の主導で進められ、15年2月に発表された際には「電撃買収」と報じられた。

稲村氏は同記事で「西室氏の経営手腕には、ほかにも疑問に感じる部分がありました」として、生保アフラックのがん保険を全国の郵便局で独占的に販売できるようにしたことなどを挙げている。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という趣もあり、そもそも稲村氏の経営幹部としての在任期間は、トール買収発表以前ではあったものの、西室氏とかぶっていた。

稲村氏は「私は最初から反対だった」としているが、副会長という枢要な役員であり経営責任がある立場にあったのだから、「殿を諌めなかった家老連」という指摘も免れないかもしれない。

(この項 続く)

2017年5月29日月曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(2)

稲村氏は、総務省時代から政策統括官として国営だった郵政事業を管轄し、日本郵政公社の常務理事に転出した人だ。一貫して郵政民営化に反対し、一時は大学に教授として転出し郵政事業から離れた。その後、民営化により株式会社日本郵便が発足した12年10月に同社副会長に就任した。14年3月には同社顧問を退任しているので、西室氏の社長時代(13年6月就任)と在任時期がかぶっている。

 郵政民営化の推進役として民間から政府により招聘された西室氏と、一貫して公営化の利点を主張している稲村氏とでは、基本的な立場が正反対なので、在任中も協調的に経営に当たっていたとは思われない。

 この記事が出たきっかけは、日本郵政が5月15日に17年3月期の連結最終損益が289億円の赤字(前期は4259億円の黒字)になったと発表したことだ。赤字は07年の郵政民営化以来初めてのことで、それが「郵政愛」の強い稲村氏の義憤につながったのだろう。

(この項 続く)

2017年5月28日日曜日

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(1)

日本郵政・西室泰三社長(ロイター/アフロ)
西室泰三氏は1935年生まれの82歳。東芝の社長、会長を歴任した後、2005年に東京証券取引所の取締役会長に、13年には日本郵政の社長に就任している。経団連の副会長も務めるなど、財界活動も活発に行った。16年2月には検査入院し、3月に日本郵政の社長職、東芝相談役を退任している。以来公の場に姿を見せることはなく、入院加療を続けていると見られる。

 経営者、財界人として華麗な経歴を重ねてきた西室氏だが、退職後に批判が噴出し毀誉褒貶半ばというより、多くの非難を集めるという状況となってきている。


日本郵便元副会長が実名告発



元日本郵便副会長の稲村公望氏が西室氏を批判した記事が話題となっている。「週刊現代」(講談社/5月27日号)記事『日本郵政の巨額損失は東芝から来た西室泰三元社長が悪い』で、「日本郵便元副会長稲村公望氏が実名で告発」という副題がついている。

(この項 続く)

2017年5月27日土曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(8)

実際にはプレイステーションが属する「ゲーム&ネットワークサービス」セグメントは、17年度予想では売上2兆円近くとされ、この巨大企業の立派な柱となっているのだ。そんな製品が現存しているのに、多くのソニーOBやファンはないものねだり、あるいは過去への郷愁を表出しがちなのである。

 前出ダイヤモンドの記事は「コングロマリットを目指すのではなく」と主張しているが、たとえば「金融」セグメントに目を留めてほしい。17年度予想では収入1兆円以上と大きな柱である。それに、営業利益が1700億円と予想されていて、これは対売り上げで15%にもなる。「半導体」以外の製造セグメント各部門では、対売上営業利益率はせいぜい10%だ。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)が15年に金融事業から撤退すると発表し、株式市場はそれを好感し、ソニーもそれを見習うべきとの指摘もある。しかし、20世紀最大の経営者ジャック・ウェルチがレガシーとして残し、GEの金城湯池だった同事業から撤退したのは、ジェフリー・イメルト会長の大きな失政だと私は思っている。ソニーは粛々とタコ足経営(8事業体制)を進めていけばいい。

 平井社長の「第2次中期経営計画」は17年度に達成される見通しだ。いずれ「第3次」が発表されることだろう。この「凋落ストッパー」経営者が、果たして「中興の祖」とまで呼ばれるようになるか、多いに興味がある。

 蛇足だが平井社長の15年3月期の報酬は5億1300万円と公表されている。通常報酬(退職報酬などではない)としては日本人経営者で最高額だ。第2次、第3次中計を実践、達成していき、「報酬10億円日本人社長」の称号を手にしてもらいたい。

(この項 終わり)

2017年5月26日金曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(7)

複合企業のままで走れ



 前出ダイヤモンドの記事の執筆者はソニーのOBではないが、ソニー愛は深く、同記事で次のように見解も述べている。

「“ウォークマン”のように人々の心に驚きと興奮を与えるモノを、ソニーが創り出すことは可能だろう。今後のソニーの経営には、収益性を重視しつつ攻める姿勢が必要だ。それはコングロマリットを目指すのではなく、新しい技術を使って、人々をワクワクさせる、より良いモノを創るということだ」

 ソニー本などで多くのソニーOBが希求してきたことは、確かにそのようなことなのだろう。同記事ではまた、「新しい技術力を用いた製品のコンセプトをまとめ、それを先進的なデザインと組み合わせることが、ソニーの強さであり、最も強い部分=コアコンピタンスだった」ともしている。異論はなく、ただ私の立場は「そうだった」と強い過去形なだけだ。

「輝けるソニー」が大賀社長時代までだったとしたら、それは20年前の話であり、年商は現在の半分の時代だった。現在、仮にユニークで消費者を真に魅了するようなエレキ製品をソニーが世に送り出せたとしても、この8兆円企業にとってはシングルヒットにしかなり得ない。

(この項 続く)

2017年5月25日木曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(6)

しかし、前述したソニーの17年度セグメント別業績予想に関する私の分析によれば家電製品はすでにソニーの本流ではない。そこをめざしても、売上8兆円ものこの巨大企業を導いていけるようなボリューム感のある製品を送り出すことは難しい。

 歴代社長を振り返ってみたとき、トランジスタラジオやウォークマンのような斬新かつ魅力的で、一世を風靡するような「家電」製品がソニーから出てくる時代は、大賀典雄社長時代(1982~95年在任)で終わった。そのあと、出井伸之社長(1995~2000年在任)以降は、ソニーの組織内からの社長昇格者となり、彼らのアントレプレナー(起業家)的素養は大きく減じてしまっている。平井現社長はアントレプレナーとしての強みではなく、マネジメント能力で勝負していると私は見ている。

 アントレプレナー型ではなく、能吏型の経営者に見える平井社長は、12年から14年までの「第1次中期経営計画」で大不調会社だったソニーの止血作業を行った後、ただちに15年に「第2次中期経営計画」を発表し、実践してきた。
 その最終年となる17年度に目標とした5000億円の営業利益を達成しようとしている。CEO在任5年間の通信簿としては、着実に成果を上げてきたと評価できるだろう。

(この項 続く)

2017年5月24日水曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(5)

平井社長は12年に「第1次中期経営計画」を発表、実施したのだが、それにより1万人もの社員削減、本社ビルの売却、パソコンなど複数の事業売却などを推し進めた。

 この時期、これらの痛みを伴う改革と相まって、平井経営への批判は高まった。ソニーという注目を集め続けている企業に対し、多くの解説本が世に問われ、「ソニー本」と呼ばれている。ソニー本の特徴のひとつは、ソニーOBの方が書いたものが多い、ということだ。

 それらの本の多くは、ソニーが昔持っていた輝かしい家電製品のリリースをなつかしみ、エレクトロクス分野(エレキ)での復権を促している。

 今回、16年3月期の決算発表を解説した記事にも、たとえば次のような記述がある。

「ソニーがかつて消費者に与えてきた、“モノ(製品)を手にする喜び”を高められているかどうかを考えると、その復活は道半ばと考えられる」(5月9日付ダイヤモンドオンライン記事『ソニー好決算で「逆ソニーショック」は起きるか』より)

しかし、、、

(この項 続く)

2017年5月23日火曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(4)

テレビに関しては、5月に入りソニーが有機ELテレビに10年ぶりに参入すると大きく喧伝されたが、実際には韓国LGエレクトロニクスなどからパネルを外部調達することによる展開で、自社による本格的な製造展開ではない。「ブラビア」の主製品である液晶テレビのパネルも、以前から外部調達なのである。
 そもそもソニーはテレビ製造販売から撤退するのではないかとの観測も、昨年まではささやかれていた。15年2月にテレビ事業が分社化された時、私は事業売却の準備の可能性があると指摘した。そんな事業部門が、会社の主流に返り咲くことは考えられない。


電気「製品」から離れていくことで利益が向上する構造



 ソニーは1997年度に最高益を記録して以来、業績凋落の傾向が続き、多くの批判を集めてきた。2011年度に4567億円という過去最大の赤字を計上した直後の12年に平井一夫社長がその舵取りを任され、現在に至っている。

(この項 続く)

2017年5月22日月曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(3)

総合電気メーカーではない、タコ足コングロマリット



 吉田氏は続けて「17年度セグメント別業績見通し」を発表した。ソニーが展開しているすべてのビジネスを8つのセグメント(事業部門)に分解して、それぞれの売上と営業利益の見通しを示したのである。総売上が8兆円、営業利益が5000億円となることは前述の通りだ。

 その発表によると、営業利益でもっとも金額が大きいのは「金融」と「ゲーム&ネットワークサービス」の2事業部門で、それぞれが1700億円。後者にはプレイステーションが属する。それに次ぐのが「半導体」の1200億円。これらの3事業で17年度営業利益総額合計の5000億円のうち4600億円となるという。

 これらの利益構造をみると、ソニーを総合電機メーカーと呼ぶわけにはいかない、とますます思う。つまり従来型のコンシューマー(個人)向けハード機器による利益貢献など、この会社にはないに等しいのだ。

 具体的には、携帯電話(「モバイル・コミュニケーション」セグメント)の17年度予想利益はわずか50億円だし、代表的な家電製品であるテレビが含まれる「イメージング・プロダクツ&ソリューション」セグメントのそれは600億円だ。音響機器が属する「ホームエンタテインメント&サウンド」セグメントのそれも580億円にすぎない。

(この項 続く)

2017年5月21日日曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(2)

営業利益の大幅な伸張




 4月28日の決算発表会では、吉田憲一郎副社長兼CFO(最高財務責任者)が淡々と数字を発表していったのだが、それを聞く限りでは、実は17年3月期のソニー業績は減収減益だった。売上高7兆6000億円は対前年比6.2%減で、営業利益2887億円も対前年比1.9%減となった。

 一見すると後ろ向きの数字だが、16年期にはいくつかの特異的な業績要因がみられた。すなわち、映画分野の営業権の減損1121億円、カメラモジュールの長期性資産の減損239億円、熊本地震の影響による保険収入相殺後の物的損失等154億円、熊本地震に関連する機会損失343億円や、保有株式(エムスリー)の売却益372億円などで、これらを相殺すると実質的な営業利益は4300億円強にも押し上げられることになる。実質的には前年比で50%近くもの大幅伸張だった。

 16年期の実質的に好調な業績を受けて、吉田CFOは18年3月期業績見通しとして売上を8兆円とするとし、加えて「15年2月に発表いたしました、現行中期経営計画の目標である営業利益5000億円以上、ROE10%以上は達成可能と考えております」と述べ、自信を示した。

(この項 続く)

2017年5月20日土曜日

ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(1)

ソニー HP」より
ソニーは4月28日、2017年3月期決算を発表した。

株式市場はその発表を好感し、直近安値3422円(4月14日終値)から4081円(5月10日終値)へと、4週間で20%も値を上げた。5月10日の終値は52週高値、つまり直近1年間での最高値ともなった。

 競合各社と比べても、ソニーに対する株式市場での評価は高い。時価総額をみてみると、5月12日現在でのソニー株式の時価総額は5兆円を超え、5兆1113億円に達した。同日で業界2位というと三菱電機が3兆5000億円、“津賀改革”で業績を回復してきたパナソニックが3兆3000億円、選択と集中でV字回復を遂げた日立製作所がようやく3兆円を超えるくらいである。

 なぜ、ソニーへの市場評価がここまで高いのか、16年3月期決算から短期的な要因を、そして12年4月からCEO(最高経営責任者)として同社を率いてきた平井一夫社長が実践してきた経営の戦略から、中長期的な道程をみてみよう。

(この項 続く)

2017年5月16日火曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(8)

三越伊勢丹



――今年3月に社長が交代した三越伊勢丹ホールディングスは、どのような手段で再建すればよいと考えていますか。

山田 小売業界で最も業績が優れている大手はイオングループですが、イオングループの収益構造を見ると、小売りよりもテナントの賃料で収益を上げています。イオンモールをつくってテナント料を得るという安定した収益構造になって、いわば小売業からデベロッパーに転換したわけです。

 同じように三越伊勢丹ホールディングスも事業構造を入れ替えて、デベロッパーやショッピングセンターへの転換を図るべきです。これができれば人件費など固定費を大幅に削減することも可能です。

――多くの社長人事を見て思うのは、社長に就任させる人材は育てるものではなく、見つけるものであることです。

山田 確かにそういう面はあると思いますが、それは日本のビジネススクールのあり方にも問題があります。アメリカと違って日本のビジネススクールはこれから経営者を目指す30歳前後の人たちを対象にしていますが、彼らが独立しても成功するかどうかはわかりません。この現状に対して、私が「リーダーズブートキャンプ」を主宰して取り組んでいるのは経営者の教育です。受講者には、一部上場企業の経営者や、受講を経てIPOを果たした経営者などもいます。

 経営者の必須要件は、リーダーシップ、戦略策定力、マネジメント力の3つです。社長になるような人はリーダーシップを身に付けていますし、マネジメント力はルーティンワークが対象なので、これも修得しています。経営者が伸びるには戦略策定力を強化することで、MBA流を叩き込むことが有効です。

――いろいろとリアルなお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

(この項 終わり)

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(7)

じつは、3月24日の大塚家具の株主総会に出て今後の店舗展開について質問したら、久美子社長はスクラップ・アンド・ビルドによって、いくつかのジャンルの店を計60店舗出店する計画だと回答してきました。

 一方で、久美子社長の業況説明では、固定経費で一番足を引っ張っているのは家賃だというのです。これだけでも戦略的に辻褄が合いません。もし私が経営会議に出席すれば「それはおかしいでしょう。売り上げが伴わなかったらどうするのか?」と質問しますが、答えられない経営者はバツ印です。大塚家具の場合、店舗数をカッシーナの倍の8店舗ぐらいに減らして、富裕層にターゲットを絞れば利益が出るようになると思います。

――その戦略を実施するには、久美子社長の存在がネックになりませんか。

山田 そうです。久美子社長には、経営者の資質がないのではないでしょうか。一昨年に勝久氏を放逐して全権を握り、初めてフリーハンドで経営に当たった最初の通期決算である2016年12月期に、売上高が前期比20%減の463億円、営業利益は前期に4億円でしたが、マイナス46億円に転落させてしまいました。社長としてダメでしょう。

――今後の大塚家具はどうなりそうでしょうか。

山田 ファンドの傘下に入って、ファンドがプロ経営者を送り込んで再建するか、あるいは経営悪化がさらに進行して転落していくか。どちらかになるのではないでしょうか。

(この項 続く)

2017年5月15日月曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(6)

――外部からの経営者の招聘に対して、若い社員は期待することがあっても、幹部になると抵抗したがるのでしょうね。

山田 プロ経営者から見れば、この道数十年の人たちがやってきて、これだけひどい状況になってしまったんじゃないの? と。つまり、これまでのやり方が間違っていたのだから、別のやり方を探しましょうよと。これがプロ経営者の見方です。

――ところで、プロ経営者にとって最も大変な仕事はなんでしょうか。

山田 企業文化を変えることです。これは大変な仕事です。成功した例に稲盛和夫氏が日本航空の企業文化を変えたことが挙げられますが、稲盛氏はプロ経営者として禁じ手を使いました。それは社長在任中に無報酬だったことです。無報酬で懸命に働きかければ、社員はついてきます。しかし、仕事として経営を引き受けるのですから、普通は無報酬で働くわけはいきません。

――やはり無報酬は禁じ手ですか。

山田 それは禁じ手ですよ(笑)。



大塚家具



――本書では、大塚家具にかなりのページを割いて取り上げています。山田さんが大塚家具の再建を依頼されたら、どんな手を打ちますか。

山田 大塚家具は価格のポジショニングを間違えて失敗しました。元会長の大塚勝久氏の時代には高価格帯で手厚い接客という整合性がありましたが、大塚久美子氏が社長になって中価格帯に切り替えて接客も担当制を廃止したら、富裕層に逃げられ、中間層も取り込めませんでした。課題は、価格のポジショニングとターゲット層をどう設定するかです。
 中価格帯と低価格帯に移行すると、ニトリとイケアが待ち構えていますが、ニトリとイケアは製造小売業なので、流通小売りだけの大塚家具は構造的に勝負できません。そう考えると勝久氏の路線は悪くなかったのです。ところが店舗数が多すぎました。反面教師はカッシーナです。富裕層を対象にして日本に4店舗しか設けていません。大塚家具の店舗数は17店舗ですが、縮小均衡を図るべきです。店舗数を減らせば売り上げも減りますが、固定費を削減できて黒字に転換できる道が開けます。

(この項 続く)

2017年5月14日日曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(5)

――抵抗勢力には、どのように対処したのですか。

山田 こんな出来事がありました。2人の副社長と管理本部長の3人が抵抗勢力だった米国系の会社では、3人に辞めてもらいました。副社長の1人が次は自分が社長になれると思っていたのですが、米国の本社はその副社長では力不足と判断して、外部から私を送り込んだのです。すると、この3人が私を着任させまいとして、本社に「山田じゃダメだ」と連絡したりしました。ところが、就業規則に厳密に照らし合わせて叩けば、たいていの経営幹部は何かしら違反を犯しているもので、現にその3人が重大な違反を犯している動かぬ証拠が見つかりました。

――金銭に関する違反ですか。

山田 そうです。そこで本社に「抵抗されているので着任できない。どうするのか?」と報告しました。本社は「就業規則違反のエビデンスもあるし、山田をサポートするから3人を解雇してくれ」と回答してきたので、解雇しました。3人が地位保全の仮処分を裁判所に申請したところ、労働裁判では会社側の敗訴が多いのに、証拠があったので会社側が勝訴したのです。

 抵抗勢力への対処法は、こうした毅然とした方法もあれば、今までよりも処遇を良くするから安心してくださいと笑顔で対処する方法もあります。要するにアメとムチの使い分けです。

(この項 続く)

2017年5月12日金曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(4)

――すると、A評価の幹部の案を採用し、C評価の幹部の案は却下するのですか。

山田 A評価の幹部が担いできたプロジェクトや商品・技術とか、推奨している技術なら良いのではないかと判断しました。フィリップスライティング(現日本フィリップス)の社長に就任したときには、150億円から半減していた年商を就任3年後に3倍に増大させましたが、これはと思う幹部が推奨してきた商品が6つあったので、6つ全部を拡販してみようじゃないかと判断して、戦略商品群と位置付けました。

すると6つのうち、自動車用ヘッドランプとポータブルプロジェクターの2つがものすごく走り出したので、2つを強化したら大ヒットして、年商3倍増に対して半分ぐらいに寄与しました。戦略上で大事なことは、状況はいつも動いているので、固定的でなく走りながら柔軟に考えることで、これは戦略セオリーとしても正しいのです。

 私の場合、社長に就任した6社とも部下を連れていかず、1人で入社しました。その会社従来の土俵で、方法と組み合わせを変えることが戦略です。


抵抗勢力の扱い方



――他の業界から来た社長には、抵抗勢力も出てくると思います。どんな業界でも、他の業界で実績を上げた人に対して「うちの業界を知らない」とか「この業界は甘くない」とか、そういう見方をする人は極めて多いですね。

山田 そうです。社長に着任したときに、部下から面と向かって、そう言われることは珍しくありません。私も何社かで経験しました。部長会で着任の挨拶をしたときに「社長、何々についてはご存じですか?」と抵抗勢力が業界知識を試してきたのです。私は「いえ、知りません。皆さんのほうが詳しいですよね」と。
 相手は、その道数十年ですから、今から私が勉強しても対抗できません。専門知識で勝負するのではなく、専門知識は部下に任せて、それを判断するのが社長の仕事です。多くの場合、選択と集中が有効でした。

(この項 続く)

2017年5月11日木曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(3)

――Aという業界では実績を上げても、Bという業界では通用しなかったでは、プロ経営者とは呼べないわけですね。


山田 それからプロ経営者には重要な要素があります。それは資本家との関係で、プロ経営者は雇われ経営者なのです。藤森氏が退任したのは、LIXILグループの前身であるトステム創業家出身でLIXILグループ取締役会議長の潮田洋一郎氏の主導による人事です。
 
 プロ経営者は高額な報酬のほかにストックオプションを与えられているので、株価を上げれば億単位の収入を手にできますが、株価を上げられなければ資本家から冷徹に退場を促されます。資本家とはドライな関係です。


戦略セオリー



――山田さんがプロ経営者として持たれている、構造的分析と戦略的立案に関する独自のフレームワークについて教えてください。

山田 私には社長に就任した業界の知識も、会社の知識も、技術の専門知識もありませんが、経営のセオリーを知っています。そこで、まず幹部から平社員まで面談を行ってから、幹部一人ひとりに宿題を出しました。これから売上の上がる分野、商品、技術について理由も併せて、2~3週間後に私と1対1でプレゼンテーションしてもらうのです。プレゼンを受けても、私には知識がないので、内容を理解できません。何を判断するのか。それは人物です。

 立論に整合性が取れていて私がスーッと理解できるプレゼンをした人の評価はA、私が「ちょっと待ってくれ」と所々質問をはさんでギクシャクしてしまう人はB、私の質問に対して埒も明かない答えをした人はCと評価しました。Cの人は「今までこのようにやってきた」「この業界のやり方はこうだ」などと抗弁してくるものです。私は業界の素人ですが、プロ経営者には判断力があります。プレゼンを受けて幹部を判断しました。

(この項 続く)

2017年5月10日水曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(2)

――残りの1割は、どのような社長なのですか。


山田 1割もいませんが、プロ経営者です。たとえば、元LIXILグループ社長の藤森義明氏、資生堂社長の魚谷雅彦氏、カルビー会長の松本晃氏。それから私は必ずしもプロ経営者だとは思っていませんが、ローソン会長の玉塚元一氏(5月末で退任)も、世間ではプロ経営者として扱われています。要するに他の業種に移っても、それまで培ってきた本人が築いてきた実績の再現性を期待され、実際にうまく経営できる人で、外資系出身が多いですね。

 どの業界に行っても状況分析ができて、こういう手段を打てばよいと判断できて、実績を上げるのがプロ経営者です。口はばったいのですが、私も外資系4社と日系2社で社長を務め、すべて異なる業種でした。私が社長を務めていた時代にプロ経営者という言葉はなく、私は「企業再生経営者」と呼ばれていました。

(この項 続く)


2017年5月9日火曜日

大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(1)



構成=小野貴史

ここ数年、東芝やシャープなど日本を代表する企業の経営危機が立て続けに起こるなか、「プロ経営者」の存在が注目を浴びることが多くなった。そこで今回は、プロ経営者としてこれまで数多くの企業再建に携わり、4月に『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版)を上梓した山田修氏に、企業再生に必要な条件や具体的手法について話を聞いた。

――山田さんは本書で「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」と指摘されています。

山田修氏(以下、山田) 戦略的な思考とは、構造的に物事を見られるかどうかで、日本の経営者にはこれが欠けていることが多いのです。日本の経営者は創業社長、サラリーマン社長、プロ経営者に分けられますが、創業社長とサラリーマン社長が90%以上を占めています。

 創業社長は情熱とエネルギーをもって遮二無二働き、直感勝負をします。構造的分析や戦略的立案などのアプローチではなく、エネルギーのままに突っ走って、成功と失敗に分かれてしまいます。戦略なき経営でも成功して、会社が成り立っている場合もあるのです。

 一方、サラリーマン社長は出世の報酬として社長という職位に就くので、従来の経営を踏襲し、ほかのことはやらないのが基本的なパターンです。社長に指名してくれた先輩を裏切れないことも踏襲の理由で、しかも多くの場合、先輩は会長や顧問、相談役などに就いて影響力を発揮しています。従って戦略的な決断ができにくい環境にあるわけです。こうした意味で、「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」といえます。

(この項 続く)


2017年4月29日土曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(8)

しかし、そういう人間的魅力と経営能力との整合性は、どれだけあるものなのか。16年に入って玉塚氏は「これからはオール三菱で当たろう」とか「三菱グループとしての強みで戦う」などとしていた。玉塚氏は退任会見で次のように述べた。

「三菱商事を巻き込んで、総合戦闘力を生かしていこうということを発信したのはそもそも私自身」
「1500億円をぶち込んで、過半数の株式を取得するTOBをされることには正直びっくりした」(共に17年4月13日付東洋経済オンライン記事『ローソンの玉塚元一会長が電撃引退する事情』より)

 正直なところは、お人の良さ、育ちの良さが窺われて好感が持てる。

 今回の玉塚氏の退任発表を受けて、あるメディアは「プロ経営者は次にどこに行く?」と報じていた。
 スター経営者である玉塚氏のことだから、次の挑戦機会も引く手あまたのことだろう。しかし、「プロ経営者」というのは玉塚氏のどこを指して言っているのか、私にはわからない。

(この項 終わり)

2017年4月28日金曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(7)

マクドナルドが使用期限切れ鶏肉使用で大きく売り上げを落としたときが年商減少率で15%だった。玉塚ロッテリアは大きな問題も報じられなかった着任初年度に、マクドナルドの最悪の年よりも悪い年商減率を記録している。また、ロッテリアの店舗数は07年9月に469店あったのだが、11年6月には398店に減少している。

 惨状を呈していたロッテリアからローソンに玉塚氏が転出したのが10年のことだったから、「投げ出してしまった」と言われても仕方ない。


プロ経営者はどこに行く



 玉塚氏は人間的な魅力があるので、ついつい「自分の後継経営者に」とか「不調なこの会社を任せたい」と思わせるのだろう。それは素晴らしいことだ。ローソンの店舗オーナーからは「タマちゃん」と呼ばれ親しまれていたという。
 
(この項 続く)

2017年4月27日木曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(6)

玉塚会長はまた、15年からは「1000日実行プラン」と銘打った改革を実行してきたが、その成果を見届けないままに退任を申し出た。私の目には「また途中で投げ出してしまった」と映る。

 かつて「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年11月22日号)が『ローソン社長 玉塚元一の逆襲』という特集記事を掲載している。「負け続けたプリンス」という副題が付いており、「大学ラグビー、ユニクロ…。最後の最後で勝利を逃す男、玉塚元一。大手コンビニで人生最大の逆襲に打って出る」と、遠慮のない表現をしていた。その「人生最大の逆襲」から、またも玉塚氏は降りてしまったのか。

 周知のように、ファーストリテイリングの社長に一度は就任した玉塚氏は、やがて柳井正氏に解任される。この解任について両人はその後互いに情けのある言辞を交換しているのだが、柳井氏が経営者としての玉塚氏を評価しなかったことは厳然たる事実だ。

 その後、企業再生会社リヴァンプを創業し共同代表となるが、目だった実績はない。かろうじてハンバーガー・チェーンのロッテリアの経営再建に当たったことは知られている。玉塚氏は06年1月にロッテリアの会長兼CEOに就任して自ら経営の任に当たった。同社は公開会社でないので詳細な財務実績は不明だが、玉塚氏が就任した翌年の07年3月期の年商が155億2,700万円と、就任前と比較して16.1%減(年換算比)になったという報告がある(経済新人会マーケティング研究部 ファーストフード業界2班)。
 

(この項 続く)

2017年4月26日水曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(5)

新浪氏の転出に伴い、ローソンの筆頭株主だった三菱商事は自社から後任社長を出そうという意向だったが、新浪氏が自らのシナリオに沿って強く玉塚氏を推挙したとされる。フランチャイズ・システムであるローソンにとって、後継社長は店舗オーナーに受けのよい人間力を持っている玉塚氏を最初から考えていたのだ。

キングになれなかったプリンス



 前述のような玉塚氏の華麗な転進の連続を、今回以下のように評する声もある。

「まるで楕円のラグビーボールのように活躍の舞台は転々とし、そしてローソンの社長に就任した。それから3年、玉塚氏はローソン顧問となり経営の一線から退く。『みんなのローソン』は完成したのだろうか」(『「みんなのローソン」未完 玉塚氏にノーサイド』<4月12日付日本経済新聞ウェブ版記事>)

「『みんなのローソン』にしていく」とは、玉塚氏がローソン社長に就任した14年に宣言した言葉だ。「17年度には連結営業利益1000億円を目指す」(14年3月24日社長交代会見)ともしていた。しかし、17年2月期は737億円で終わった。仕上げていない。

(この項 続く)

2017年4月25日火曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(4)

大学卒業後のキャリアをみてみても、旭硝子から米国留学を経て日本IBMに転職、ここまでは平のサラリーマンだが、ファーストリテイリングの柳井正社長に見込まれて同社に参画、やがて02年に40歳で柳井氏の後継として社長に登用された。

しかし、05年には更迭されて同社を離れ、企業再生のリヴァンプを澤田貴司氏(現ファミリーマート社長)と創業して共同代表を務めた。

 そして10年に玉塚氏をローソンに招聘したのは、同社の新浪剛史社長(当時)だった。三菱商事から転籍してきた新浪氏は、ローソンで辣腕を振るい、カリスマ経営者として君臨していた。

 14年5月に新浪氏が会長に退き、玉塚氏が社長に就任するという人事が発表されたとき、私はそれを新浪氏が外部に転出するための準備だと予言した。果たしてそのすぐ後、6月に新浪氏のサントリー社長への転進が発表された。そもそも新浪氏が玉塚氏をローソンに招聘した時には、すでにサントリーへの転出を見据えてのことだった、とも評論した(14年11月24日付本サイト記事『サントリー新浪社長、就任まで4年越しの深慮遠謀』)。

(この項 続く)

2017年4月24日月曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(3)

私の分析に、後になって玉塚氏自身の認識が追いついたのではないか。玉塚氏が辞表を叩きつけるべきタイミングは、本当は昨年9月だったのではないか。育ちのよさは人を鷹揚にさせるのかもしれない。

 経営者としての玉塚氏のファンは多い。幼稚舎から大学まで慶應義塾という育ちのよさと、大学ではラグビー部のキャプテンを務めて、学生選手権や全日本で活躍した。

「ラグビーで鍛えた堂々たる体躯。身長は181センチ。甘いマスク。誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それが玉塚の最高のスキルである」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/14年11月22号>より)

こう評された人間的な魅力などにより、その去就がいつもマスコミで報道されるスター経営者だった。


(この項 続く)

2017年4月23日日曜日

ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(2)

華麗な経歴、スター経営者・玉塚元一


12日の退任会見で、退任を考えたのはいつ頃かと問われた玉塚氏は、「今年の2月末ぐらいから。ちょうど三菱商事によるTOB(株式公開買い付け)が成立した直後というタイミングだった」と答えている。しかしTOBを行うことは、2016年9月に発表されていた。その時点でローソン株の33.4%を有していた筆頭株主の三菱商事が、さらに50%超まで株を公開で買い付けるという内容だ。

 その意図について私は当時、本連載記事で以下のように解説していた。

「私はずばり、玉塚元一会長CEO(最高経営責任者)への不信任の徹底ということにあるとみる。別の見方をすれば、6月に玉塚元社長が会長に上がったときに新社長COO(最高執行責任者)に就任した、三菱商事出身の竹増貞信氏への経営権集中ということだ」(2016年10月2日付記事『コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営』)

(この項 続く)